ロシア周辺の伝統的な発酵乳製品

ロシアおよび周辺諸国

最も原始的な発酵乳「プロストクワーシャ」は、原料乳を中温性乳酸菌で発酵させたものです。1900年代に入ると、メチニコフが紹介したブルガリアのキセロ・ムリャコをオリジナルとした「メチニコフ・プロストクワーシャ」も消費されるようになりました。コーカサス原産の「ケフィール」が大量に生産されています。また、第二次世界大戦の負傷兵の健康回復にアシドフィルス菌を使った「アシドフィルスミルク」が効果を発揮したといわれ、アシドフィルス菌を利用した多くの発酵乳が作られています。発酵乳からホエーを除いた濃縮発酵乳「ツボロク」の消費も盛んです。

ヨーロッパとアジアの境界地帯でもあるカルパチア山脈の東側で作られる「フースランカ」、東カルパチア山脈の山岳地帯で作られる「ツェンチツァ」は、いずれもブルガリアのブラノ・ムリャコに似た伝統的な発酵乳です。

ウクライナ

原産の発酵乳でウクライナヨーグルトともいわれている「リアツェンカ」は、95℃で2~3時間加熱した牛乳を、ブルガリア菌とサーモフィルス菌を含むスターターで発酵して作ります。褐色で、滑らかな舌触りとカラメルフレーバーを持つのが特徴です。同じ製法の「バレネッツ」には、発酵後にカードをくずしたものもあります。

コーカサス地方

コーカサスの山岳地帯を原産とする「ケフィール」は、乳酸菌以外に酵母を含むケフィール粒をスターターとして用いるので、わずかなアルコール(1%以下)と炭酸ガスを含み、さわやかな風味が特徴です。イスラム教の創始者マホメットが、布教のためにこのケフィール粒を用いたといわれるほど古くから飲用されてきました。ケフィールは、ロシア、ポーランド、チェコとスロバキア、スカンジナビア諸国、ハンガリーなどで多く消費されていますが、近年では、ドイツ、フランス、スイスなどの西欧諸国でも市販されています。

アルメニア

国民的発酵乳「シュッツマ」は、牛乳をヨーグルト菌で発酵後、凝固物を切断してホエーの一部を除き、さらにこの凝固物を布袋に入れてプレスし、水分を70%以下にしたものです。「カチーク」は、加熱によって水分を一部蒸発させた濃縮乳に前回の残りのカチークを加え発酵させたものです。

アルメニア

アルメニア原産の発酵乳としては、スターターにヨーグルト菌(ブルガリア菌とサーモフィルス菌)を用いた「マツーン」があります。この地、布袋で発酵後ホエーを除いた濃縮ヨーグルト「タン」があります。

グルジア

グルジア原産の「マッツォーニ」は、アルメニアのマツーン同様に、ヨーグルトに似た発酵乳です。

中央アジア(ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタン)

世界最古の遊牧民である中央アジアのアーリア人は、馬乳から作ったアルコール含有の発酵乳「クーミス」を紀元前2千年ころから飲用していたといいます。コーカサス地方原産のケフィールよりもアルコール含量が高く、3%にも達する馬乳酒です。クーミスという名は、中央アジアのクマン川沿いに住んでいたクマン人の種族名に由来するといわれています。13世紀に書かれたマルコ・ポーロの東方見聞録にも、『蒙古人の大好きな飲料はクーミスである』と書かれています。クーミスの産地としては、カザフスタン、バシキール、キリギス、タタール、モンゴルがあります。ロシアでも根強い人気があり、アスコルビン酸を強化した牛乳からクーミスが作られ、「クルンガ」と呼んでいます。

カザフスタンでは、アイラン(バターミルク)から濃縮発酵乳「カチーク」、さらにカチークを小片にして風燥し、「クルト」を作ります。ラクダ乳からは、クーミス様発酵乳「シュバト」を作ります。「チャル」は、カザフスタン、トルクメニスタンなどで、ラクダ乳から作られる発泡性発酵乳です。

ウズベキスタンでは、加熱濃縮乳に前回の残りのカチーク(スターター)を加えて発酵させ、「カチーク」を作ります。このカチークに塩を加えて布袋に入れ、吊してホエーを除くと濃縮発酵乳「スジマ」ができます。このスジマに、塩、粉末トウガラシを加え、クルミ大の球にして風乾したのが保存食品の「クルト」です。

タジキスタンの「クルート」は、加熱濃縮乳を発酵し塩を加えて布袋に入れ、吊り下げてホエーを除いたカード(凝固物)をクルミ大の小球とし風乾したものです。

トルクメニスタンの「ブーサ」は、乳と米の混合物を乳酸菌および酵母で発酵したもので、アルコール含量が7%もあります。

ヤクート

牛乳を2~3時間加熱し、前回の残りの発酵乳(ソラト)を加えて発酵し、「ソラト」を作ります。このソラトを水で希釈して飲料の「ウマン」を作ります。冬季には、ソラトにバター粒と水を混合した「ウダン」を作り、飲用します。