アジア各地の伝統的な発酵乳製品

アフガニスタン

中央部は羊乳、その他の地域は牛乳、北部や南部の山岳地帯はラクダ乳が多く利用されています。アフガニスタンの典型的な乳製品「ドーク(シュルンベともいう)」は、まず原料乳を沸騰した後冷却し、マスティと呼ぶカード(スターター:発酵の開始のために加える微生物の集団を含んだもの)を加えて発酵し、マースト(ヨーグルトのようなもの)を作ります。これを銅器や皮袋にいれて攪拌し、バターを除きます。残ったバターミルクを「ドーク」といい、そのまま飲用したり、さらに加工して利用します。ドークを布袋に入れてホエーを除いたカードを「チャカ」といい、利用します。また、ドークを加熱した時にできる上層部の浮上凝固物を布袋に入れて水気を切り、加塩して団子状とし、天日乾燥した保存食が「クルト」で、水に溶かして料理に使われます。

インド

東洋で乳の利用を一番早く行ったのはインドといわれています。古くからヨーグルトに似た発酵乳「ダヒ」があり、代々その家での作り方が伝えられ、家庭料理には欠かせないものとなっています。その作り方は牛乳や水牛乳をまず加熱殺菌し、ダヒの残りをスターターとして加え半日室温で発酵させます。ダヒは、肉料理、サラダ、ドリンクなどに用いられるだけでなく、常に食卓にあり、好みに合わせて食べられています。このダヒをかき混ぜて浮いたバターを取り除いたものがバターミルクに相当する「ラッシー」です。「スリランド」は、ホエーを除いたダヒ(「チャッカ」といいます)に砂糖を加えて練り上げたもので、そのままデザートとして食べたり、菓子用の原料にされています。

ネパール

標高の高い山岳地帯に位置するため、この環境に適応したヒマラヤ牛、ヤク、水牛、山羊が分布しています。ネパールの乳製品は、すべてインドと同様の「ダヒ」から作られます。ダヒをかき混ぜて、まずバターとバターミルクを作ります。バターからはバターオイルの「ギー」が作られます。バターミルクを加熱して凝固したカードを作り、さらにカードからホエーを除いたのが「チュラ(チーズ)」です。このチュラを餅状やチューブ状にして風乾したのが保存食品の「チュルピー(ドライチーズ)」です。

中国(内モンゴル、チベット)

モンゴル民族が定着した内モンゴルやヒマラヤ周辺のチベットでは、モンゴルやネパールに似た牧畜と乳利用が行われています。乳を静置発酵させ、浮上したクリームを取り除いた残りの脱脂発酵乳が「エードスンスー」で、これを加熱してホエーを除いたカードを乾燥したものが「スーンホロート」です。スーンホロートは冬季の保存食で、乳茶で溶かして食べます。また乳を加熱してクリームを取り除いた濃縮乳(ボルソンスー)にスターターを接種して静置発酵したものが「タラグ」で、そのまま食べられます。馬乳酒のアイラグは、「チェゲー」あるいは「チゴー」と呼ばれ、女性や子供も飲用します。

チベットでは、ヤク乳の発酵乳「ツォー」、バターミルクの「ダ・ラ」があります。また、ネパールと同様の「ダヒ」があり、ダヒからは、「チュラ」や「チュルピー」も作られます。

パキスタン

インダス川流域では水牛が、山間部では、山羊、牛が飼育されています。これらの乳を発酵して「ダヒ」を作り、そのままか、もしくはホエーを除いたカードをボール状に乾燥したのが保存食品の「カルート」です。

モンゴル

モンゴルは牛、山羊、羊、馬、ラクダの五蓄を有するアジア有数の牧畜国であり、すべての家畜の乳が主食に近い形で利用されています。乳を放置して自然発酵させ、表面に浮上したクリーム(ズーヒー)を取り除いた脱脂発酵乳が「タラグ」で、そのまま消費したり、乾燥乳製品の原料としても利用されています。馬乳酒「アイラグ」は、国民的飲料として人気がありますが、馬乳酒は、馬の搾乳期である夏季の7月から9月にかけて約2ヶ月間ほどしか製造できません。アイラグはアルコール含量2.5%以上と、アルコール含量が高いので、蒸留することによって蒸留酒の「アルヒ」が作られます。